【報告書】第3回 定例研究発表会 報告書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【日時】2019年5月16日(木) 18時半~20時半 
【場所】沖縄県立芸術大学 沖縄県立芸術大学 附属研究所 小講堂
【参加人数】22名 

 

【プログラム】

18:30‥開会の挨拶

18:35‥研究発表①「デジタルアーカイブ学会 第3回研究大会 参加報告会」

19:20‥休憩

19:30‥研究発表②「沖縄県内における、民間の古写真収集について」

20:15‥会員活動報告、事務局報告など

20:30‥終了

 

進行/真喜屋力 (沖縄アーカイブ研究所)


研究発表①「デジタルアーカイブ学会 第3回研究大会 参加報告会」

講師:平良斗星会員(株式会社エフエム那覇)

 

  デジタルアーカイブ学会は、日本のデジタルアーカイブ推進を目的とした全国的な組織。平良会員は沖縄で唯一のデジタルアーカイブ学会の評議委員であり、今年3月のデジタルアーカイブ学会研究大会にも参加された。日本全体のアーカイブの動向やトレンドについての共有。また、それを受けて沖縄を含めた、地方のアーカイブの今後の指針などについて、考察を述べていただいた。現在、デジタルアーカイブ学会で議論の中心となっているのは、以下の2つに集約されている。

 

 ①アーカイブをどう整理していくか?「ツールやデータベース」について。

 ②アーカイブをどう公開していくか?「著作権処理」「肖像権」について。

 

 ①の「ツール、データベース」についてはomekaというオープンソースのウェブアプリケーションが注目されており、国内での採用事例も見られる。今回の研究大会では、omekaを実際に使って見るセッションもあったという。

 ②の「著作権処理」「肖像権」については、やはり参加者からの関心も高く、セッションへの参加人数も多かったという。著作権の利用範囲を段階的に明示した「クリエイティブコモンズ」の採用が主流になっていくという見解や、また「デジタルアーカイブ整備推進法(仮称)」という法整備に向けて、議論中だという。「肖像権」については『肖像権のリスクがゼロになるものではないが、肖像権から生じるリスクも、限りなく低いもの』という意見もあった。

 その他、地域のアーカイブを手がけている人々をゲストとして招き、「アーカイブの利活用」を焦点としたセッションも行われた。平良会員も沖縄のアーキビストとしてゲスト参加され、福島県にあるダムに沈んだ地域の写真を掘り起こしている榎本千賀子さん。京都の被差別部落が利用していた銀行に、あずけられてた資料の企画展示を手がけている林田新さんが参加し、それぞれの事例を紹介。

 

 平良会員いわく「著作権処理や技術的な議論は中央の人たちに任せて、地方のアーキビストは、アーカイブの利活用を積極的に進め、事例を増やしていく。それらの事例を日本全体に投げかけ、連携していく形が望ましい」ということ。その後、会場の参加者に意見交換を投げかけ、平良会員の発表は終了。


研究発表②「沖縄県内における、民間の古写真収集について」

講師:仲里政範氏(元 小橋川フォートカメラマン)/深谷慎平会員(スタートライン株式会社)

 

 ゲストの仲里政範さんより提供された1960年代の沖縄の写真をもとに、深谷会員がデジタル化し、2人による古写真スライドショーが行われた。仲里さんは1945年生まれ。学生時代からカメラに親しみ、沖縄高校(現在の沖縄尚学院)卒業後、国際通りにあった写真館「小橋川フォート」に就職し、当時の「りうぼう」の宣材写真などの撮影を手がける。その後、東京の印刷会社に10年勤めたあと、沖縄に戻った。「とりあえず、当時の風景を残しておきたい」という思いで、仲里さんが撮影した写真は、県内・県外問わず、およそ約4000枚以上。自分で保管していたものの、これらを写真をどう残そうかと悩んでいたという。今回の発表内容は以下のとおり。

 

①那覇市国際通り周辺 ②1968年 嘉手納基地 B52墜落現場 ③デパートりうぼう 広告写真の裏側

④仲里さんが勤めていた~小橋川フォート~ ⑤那覇市以外の写真と、航空写真

 

 国際通りや平和通り、むつみ橋通りなどの街中の写真からは、当時存在した建物の姿(武徳殿や琉球政府立法院など)が見られ、デモ行進や嘉手納基地B52墜落事故の様子など、当時の出来事も撮影されていた。りうぼうの新聞広告や小橋川フォートの写真では、撮影の舞台裏や人々のファッション、生活感などが伝わってきた。前回(第2回)の研究発表では、「個人や地域が残した写真が、じつは地域史の貴重な資料になりえる」と深谷会員からの発表があったように、今回の発表は良い具体例だといえよう。

 

 


調査報告:「福地唯方(ふくちただまさ)氏8ミリフィルムコレクション」

 

真喜屋力(沖縄アーカイブ研究所) 

 

郷土史研究家の福地唯方さん(故人)が撮影した8ミリフィルムの存在が明らかになった。経緯として、福地さんのご家族より「フィルムが何らかの役に立つ事であれば、どのように使っても良い」という条件のもと、那覇市歴史博物館へ寄贈の申し出があった。著作権処理はクリアになっているものの、那覇市歴史博物館の方では映像の取り扱いが出来ないため、沖縄アーカイブ研究所が一時預かることとなった。

フィルムの箱への記載を見る限り、1960年代~1970年の本島・離島の祭祀の記録などが撮影されているようだが、フィルムの劣化が激しく、フィルムの絵を確認することが出来ない。フィルム修復の専門業者に問い合わせたところ、1本あたり約30万で修復とデジタル化は出来るということだが、現時点では、予算の確保も難しい。とりいぞき、全てのフィルムの状態を調べ、目録作りから着手していくという。