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【報告書】第4回 定例研究発表会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









【日時】2019年7月19日(金) 18時半~20時 
【場所】沖縄県立芸術大学 沖縄県立芸術大学 附属研究所 小講堂

【参加人数】22名 

 

【プログラム】

18:30‥開会の挨拶(5分)

18:35‥研究発表①「南城市の文化財デジタルアーカイブ構想」(40分)

19:15‥休憩(5分)

19:20‥研究発表②「地域芸能映像アーカイブ構築の試み」(30分)

19:50‥会員活動報告、事務局報告など(10分)

20:00‥終了

 

進行/真喜屋力 (沖縄アーカイブ研究所)

 


研究発表①「南城市の文化財デジタルアーカイブ構想」
講師:新垣 瑛士(南城市教育委員会文化課)
今回のゲスト講師は南城市より新垣瑛士さんを招き、現在取り組んでいる南城市デジタルアーカイブについて発表いただいた。

●始めた経緯と事業計画

南城市は斎場御嶽やグスク跡をはじめとする、史跡が多く残る自治体。それら地域の文化財をいかに活用するべきか議論が重ねられ、利活用の一環として、南城市のデジタルアーカイブを作ることとなった。とはいえ、担当職員の多くがアーカイブ等に関しての経験もなく、まずはしっかりとした計画を立てるため、専門家を招いての策定委員会を組織し、実施計画書をもとに事業がスタートした。

事業計画は「デジタル化」「システム化」「コンテンツ制作化」の3段階に分かれ、2025年の完了を計画している。ちなみに今年度から再来年度にかけては「デジタル化」を行い、今年度は資料調査や目録整理が主な業務内容でまだまだスタートしたばかり。

 

●目録整理

市の保管する郷土資料は、文書、写真(プリント・フィルム)、カセットテープ、ビデオテープ、民具など多岐にわたる。

長らく保管されていた資料が殆どで、また、担当職員も数年ごとに変わるため、現状確認のために目録整理に取り組んだ。

「どこに」「何が」「どれだけ」を把握する「目録整理」はアーカイブの基礎・土台となるもので、これを疎かにしては、効果的な利活用はありえない。「資料コード」「分類」「数量」「状態」「保管場所」などを一元化で記録し、また、複数の職員でも把握できるようなルール決めなど、細かい部分にも配慮する。

 

●デジタル化や公開

デジタル化の手法や工程に関しては、国立のデジタルアーカイブを参考に(国立公文書館、国立国会図書館など)国が示す仕様を参考にしていく。また、公開を原則としており、公開できないもの、すべきでないものに関して定義をすすめていく。公開・非公開または2次使用に関するルールも明確化・単純化し、パブリックドメインなどの国際基準のものを、仕様として考えていく。

 

●継続可能・市民参加のアーカイブとして

次年度以降にデジタル化作業、システム構築などに取り組んでいくが、保守やセキュリティ面も考慮し、現実的に導入可能なシステムの採用、人員の確保などを含め、継続して利用できるようなアーカイブづくりを目指す。

また、作るまでがゴールではなく、利用者(市民)が参加でき、今後育てていけるようなアーカイブを目指していく。


研究発表②「地域芸能映像アーカイブ構築の試み」
講師:久万田 晋(沖縄県立芸術大学、ODAC会員)

 

後半は、久万田晋会員が講師を務めた。これまで自身が調査と研究に取り組くんできた中で、地域芸能の映像アーカイブを構築し、それを通して明らかになった課題面や、今後の利活用の広がり等を含めて語っていただいた。 

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沖縄県立芸術大学 久万田研究室データベース

件 数:約900件(※元メディア単位)

種 類:VHS、8ミリ、Hi8、ミニDV、HD画像(データ)

範 囲:沖縄本島、奄美、宮古、八重山、台湾、中国、インドネシア、タイ、ラオス他

規 格:mpeg-2、mpeg-4

所有者:個人所有、各団体、各教育委員会など

公 開:非公開(※問い合わせあった際に、個別対応)

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●機材と費用、人員の問題

1980年ごろから各地の記録を撮り始め、今日までを振り返ると、映像機器(カメラ・再生機)の移り変わりが激しい。古くなった機材は、そのうち修理も受けられなくなるため、機材が健在なうちにデータ化しておくことを推奨したい。専門業者にお願いするという方法もあるが、その分の費用が必要となる。また、費用を予算化できたとしても、デジタル化ための人員が必要となる。結局は「お金」「時間」「人手」のコストは避けて通れない課題。

 

●内容(演目)の整理

これまで記録メディアごとにデジタル化を行ってきたものの、その収録内容の細かい選別が必要となる。例えば、ある村踊りの記録でも、複数の演目が残されていて、演目ごとに区切ったり、踊りや地謡の解説を入れたりなどの編集作業が必要となる。

 

●肖像権・著作権の問題

過去に撮影された映像など、とりあえず記録として撮影はされたものの、肖像権(演者など)の許諾はとられてこなかった。だが、昔の古い映像とはいえ、公開するには肖像権や著作権の問題を解決する必要が出てくる。公開の方法を限定的にするか、何らかの方法を考える必要がある。

 

●地域芸能の姿を残していくには

以上のことを踏まえ、映像を今後残していくには、機材や費用、人員、肖像権等の権利関係を含め、課題を一つ一つクリアしていく必要がある。公開できないとしても、貴重な映像は残していくべきではないか。また、市民が撮影した地域の記録をなど、今後活用できるような仕組みづくりも考えていくべきではないのか。

 


会員からの活動報告

「沖縄のハジチ企画展とクラウドファンディングの呼びかけ 

山田豊会員(株式会社Nansei) 
株式会社Nanseiでは「沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー 歴史と今」と題する企画展を、10月に開催。
それにあたりクラウドファンディングで資金協力を募ることとなった。

「沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー 歴史と今」企画展と

《期間》2019年10月5日(土)~11月4日(月)

《場所》沖縄県立博物館・美術館

《入場料》無料

 

「沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー 歴史と今」企画展

https://www.nansei-m.co.jp/site/news/2019/07/16/2146/

 

「沖縄のハジチ、台湾原住民族のタトゥー 歴史と今」のクラウドファンディング

https://a-port.asahi.com/okinawatimes/projects/OkinawaTaiwanTattoo/

 

 

「福地唯方(ふくちただまさ)氏8ミリフィルムコレクション 一部デジタル化の報告」

仲間公彦会員(沖縄アーカイブ研究所) 

前回の定例研究発表会でも発表した、福地唯方(郷土史研究家、故人)が撮影した8ミリフィルムコレクション。
1960年代後半〜1970年前半にかけ、沖縄各地の行事を記録した貴重なフィルム。
だが、フィルムの劣化が激しく、加えてデジタル化のコストが1本につき30万の見積され、デジタル化をあきらめかけていたが、
(株)東京光音のご厚意により、テストピースとしてデジタル化の協力をいただいた。

その中から「真境名由康 組踊:二童敵討1966年タイムスホール」のサンプル映像を公開した。

※詳細は下記リンクより

 

 ’66年の真境名由康と87本のフィルムの復元

https://okinawa-archives-labo.com/?p=4731